南会津 黒滝股山(1405.7m) 2013年3月9日

所要時間 7:15 除雪終点−−7:30 尾根に取り付く−−8:15 1095m峰−−8:59 1175m峰−−9:43 1216m肩−−10:30 黒滝股山 10:33−(写真撮影含む)−10:42 県境 10:46−−10:52 黒滝股山(休憩) 11:40−−12:29 1175m峰−−12:59 1095m峰−−13:16トレース−−13:23 除雪終点

場所福島県南会津郡南会津町(旧会津田島町)
年月日2013年3月9日 残雪期日帰り
天候
山行種類残雪期の藪山
交通手段マイカー
駐車場小出原集落より先の林道の除雪終点に駐車可
登山道の有無無し(積雪で不明)
籔の有無アスナロ藪あり
危険個所の有無少々あり(痩せ尾根、露岩)
山頂の展望残雪期なら大展望!
コメント残雪期なのに高温の日に覚悟して出かけて雪質に苦労した。小出原集落奥の除雪終点より少し歩いて1095m峰北東尾根に取り付く尾根上は北側直下は土が出ていたが藪皆無。1095m峰近くから残雪を歩くが1175m峰手前からアスナロが混じり、1175m峰より先はアスナロ主体で展望、日当たり悪く雪質がさらに悪化。穴に落ちたり雪の段差を乗り越えるのに足元が崩れてなかなか上がれなかったり。標高1300m肩を越えるとやっと明るい落葉樹林になり雪質向上。山頂は大展望。雪庇が連続する痩せ尾根を通って県境まで。ここだけ森林限界突破




栗生沢から見た黒滝股山
除雪終点  除雪終点より先のトレース。たぶん林道 
この辺から尾根に取り付く  下部は雪に覆われる 
 途中は北側寄りで地面が出ていた 1095m峰から黒滝股山方向 
こんな目印が点在  奥の三角が黒滝股山 
アスナロが増えてくる  1175m峰付近。ここから急にアスナロが濃くなる 
痩せ尾根  露岩。右を巻く 
無雪期の目印  密林状態 
開けた場所から西側を見る
東側は那須西部の山  カモシカのトレースに助けられた 
次の展望地から。黒滝股山が近づいた
1300m肩で落葉樹林に出る  1300m肩から北西方向。アスナロの森 
明るい樹林を登る。雪が締まる  雪庇が出てくると山頂は近い 
黒滝股山山頂  黒滝股山山頂標識 
黒滝股山から見た西〜北の展望(クリックで拡大)
黒滝股山から見た東〜南の展望(クリックで拡大)
県境方向  県境に向けて痩せた稜線を南下 
 黒滝股山方向を振り返る 県境 
県境から見た南半分の展望(クリックで拡大)
 山頂の一つ南側ピークの東で休憩  
最後の下り  除雪終点到着 


 黒滝股山は那須と男鹿山塊を接続する栃木/福島県境付近に位置する。県境より僅かに福島側に飛び出しているのは枯木山同様。県境だが登山道は無く登る人はあまりいないと考えられる。たぶん残雪期に登られるのがほとんどだろう。残雪期だと人家があるところしか除雪されないので、最寄りは旧田島町の小出原集落となる。ここから沢の右岸に書かれた破線を辿り、1095m峰へ取りついて黒滝股山北西尾根を登るのが順当と考えた。もう一つの選択肢として沢を遡上し、標高810m付近から山頂へ突きあげる尾根を目指すルートも考えられたが、沢に滝があったりして遡上困難も考えられることから今回は見送った。

 白河ICを降りて国道289号線で南会津へ。昔と比べて便利になった。田島市街地で県道369号線に入り栗生沢集落を目指し、水無川を渡って小出原へ。幸い、この道も除雪されている。集落に入りT字路を右に曲がってまだ除雪されている。右手に建物がいくつか立ち並んでいるところで除雪終点。ここに車を置いて出発することにする。

 出発準備中に2匹の犬を連れた地元のおばあさんが登場、ちょうどこれから歩こうとしている地形図の破線を歩いてやってきた。これでトレース確定で少し楽できるか。黒滝股山のことは知っているようであったが登ったことはないという(当たり前)。ただ、近くの集落ではその昔、雪がない時期だが毎年三斗小屋まで歩いていたとのことで、知られていないルートがあったらしい。ただし、それが県境尾根通しかは分からない。この付近の山は意外に藪は無いとのことであった。

 天気予報は土日は気温が上がると言っていたが会津はそこそこ冷え込んで0℃くらい。しかし時期的にはちょっと高めで雪は緩んでいる。最初からスノーシューを装着して出発。今季初だ。ピッケルも12本爪アイゼンも今季初出動だ。さて、これらが活躍するような場面があるだろうか。

 おばあさんは毎日このコースを犬を連れて散歩しているようで、林道続きと思われる破線のトレースは締まって歩きやすい。左手が広い谷から尾根に変わったところで取りつき点を探す。この雪質だと地面が出ている部分を歩いた方が楽なので、スノーシューのままだが雪の少ない部分で尾根に取りついた。尾根の南側ではなく風上になる北側の方が雪が少ないのも面白い現象だ。尾根直上より僅かに北側に寄りつつ高度を上げる。周囲の植生はあかるい落葉広葉樹林で下草皆無、地面は落ち葉に覆われている。これでは無雪期の方が楽に歩ける。ただ、この植生がどこまで続くのかは不明だ。

 適度な傾斜で高度を上げて1095m峰へ到着。山頂方向から下ってくると北西へ延びる主稜線よりも今登ってきた尾根の方がメインに見えるので、下りも問題ないだろう。北西尾根に乗っていよいよ雪が増えてくるが、まだ尾根西側は地面が見えるところもある。小さな雪庇ができていて残雪期の雰囲気が出てくる。毎年雪庇が同じ場所にできるのだろう、雪庇の上は木が生えていないので日当たりがよく、雪はそこそこ締まって歩きやすかった。ところどころに赤ペイントの目印と赤テープが見られた。赤テープは雪面ぎりぎりのもあったので無雪期のものらしい。

 しばし明るい落葉広葉樹林の尾根が続くが、にわかに常緑樹が増えてきた。葉をちょっと見た目は檜だがやや肉厚で、こいつは檜ではなくその仲間の「アスナロ」らしい。檜とアスナロはごく近縁種で、2本が並んで立って生えていると、お互いの幹が完全にくっついて1本の木になってしまうくらいだから、見た目では簡単に判断できない。ただ、こんな山の中で自生しているのは、普通はアスナロだ。

 アスナロは常緑樹なので日影が多くなり、雪の締りが悪くなり始めた。踏み抜きが多くなり、場合によっては膝の深さまで落ちることもある。こうなると一気にスピードが落ちるし体力も消耗する。まだ山頂まで距離があるが、届くかなぁ。

 1175m峰を通過すると尾根上はほぼアスナロ純林となり、ますます雪質が悪化した。場所によってはアスナロ幼木が丸ごと雪に埋もれているが見た目ではそれが判別できず、踏みつけると積雪が不足して木の周囲は空洞になっていてスノーシューを履いたまま腿まで穴に落ちることも。こうなると脱出が面倒である。また、軟雪の段差を越えるのも一苦労。スノーシューを蹴り込んでも雪の足場が崩れてしまい、あちこち足の位置を変えて周囲の檜に掴まって強引に体を引き上げたり。残雪初シーズンからえらい目に遭うことになってしまった。おまけに痩せ尾根は登場するし、露岩もいくつか出てくる。幸い、乗り越えられる高さだったり右手を迂回できたりと、岩についてはさほど危険はなかった。

 再び標高1150mを越えて広い尾根に達するとイヤらしい場所は無くなり、踏み抜き連発のアスナロ樹林の尾根を進んでいく。1220m付近と1270m付近に東側の樹林が開けて展望が得られる場所があり、雪をまとった那須連山を見渡すことができる。あっちはこんなアスナロは無いだろうな。

 1300m肩を通過して最後の登りが始まるところでやっとアスナロが消えて背の高い落葉広葉樹林が復活。北斜面だが今までより格段に日当たりが良くなり、踏み抜きの確率もぐっと低下し残雪期らしい雪質を楽しめた。全く沈まない雪面がこんなに楽だとは! でもつぼ足だとどれくらい沈むかな。尾根は右に曲がりと同時に雪庇が登場、その上部は傾斜が緩んで山頂の雰囲気あり。

 雪庇を登りきって傾斜が緩むと、こんもりとした丸い黒滝股山山頂に到着。ここは森林限界ぎりぎりのようで高い樹木は無く、生えているのは落葉樹ではなく背の低いアスナロがほとんどであった。真ん中付近に1本だけ低いダケカンバが半ば雪に埋もれて立っていて、雪面ぎりぎりに青いブリキ板が。文字は消えているがMWV標識だろう。この高さということは無雪期に登ってきたのだろう。ただし、おそらく今の積雪は深くても1mくらい、たぶん50cm程度だろう(雪庇は2,3mありそうだ)。展望は360度、少し空気が澱んでいて遠方まで見えないが、北方には微かに真っ白な山が。たぶん浅草岳や御神楽岳だろう。北東の真っ白な屏風状の山波は会津駒ヶ岳に違いない。その右手には燧ヶ岳。奥日光は男鹿山塊に邪魔されて一部しか見えていない。南側はかなり空気の透明度が悪く、高原山すら見えない。近場の那須や男鹿山塊はくっきりだ。この天候なら大佐飛山も賑わっているかもしれない。

 休憩の前に県境を踏んでくることにする。そこは山頂より低いが、せっかくの境目である。枯木山同様踏んでおかないと後悔するかもしれない。山頂ピークの次のピークの東側が風除けになる平坦地で、ここにザックを下してピッケルを持って南を目指す。

 県境に連なる稜線は雪庇の連続で細かいアップダウンがある。また地形のアップダウンも大きなものは無いが数mのものはある。雪庇崩壊に注意して少し西寄りを歩いたりするが、痩せている場所もあって要注意だ。

 樹木が低くなると県境で、石楠花や薄いハイマツが半分雪に埋もれていた。ここには標識等は無かった。雪の上の足跡も皆無(当たり前)、西には男鹿山塊、東には那須。どちらへ続く稜線も日当たりがよさそうな落葉樹林の稜線に雪庇ができていて、もう少し遅い時期なら快適に歩けそうだ。南斜面には雪が割れて笹が見える場所もあり、無雪期はそれなりの笹藪らしい。今だったら笹は完全に埋もれている。

 ザックのデポ地点に戻って休憩。ここまで休憩無しだったし、この雪質なので疲れた。天候は快晴、日差しは眩しいくらいだ。今シーズン初めて日焼けしそう。もう日焼け止めを準備しないといけない。

 昼飯を食い終わって下山開始。重い雪も下りだったらマシだ。ただ、1175m峰までは登りも混じって疲れた。ピークを越えて徐々に明るい樹林に変わっていき雪質も安定してきた。1095m峰で左に自然に尾根が曲がって最後の下り。この尾根は場所を選べばほとんど下まで地面が出ているところを歩けるが、どうせ平坦地に下ったらスノーシューが必要だし、下りは雪に乗って衝撃を吸収した方が疲労が少ないこともあり、スノーシューを履いたままでわざわざ雪のある場所を選んで歩いた。

 平坦地に到着すると新しい足跡が追加されていた。やっぱりつぼ足だとコンスタントに足首の深さまで潜っているがスノーシューでは1,2cm。長距離だと体力消耗の差が大きいだろう。間もなく除雪終点に到着、日差しが暖かかった。

 

2000m未満山行記録リストに戻る

 

ホームページトップに戻る